三谷産業はベトナムで自動車部品を増産する。南北にある2つの工場でワイヤハーネス(組み電線)用の樹脂部品の生産設備を追加し、今秋までに生産量を3割増やす。投資額は約2億円。東南アジア各国や北米で自動車生産が伸びており、部品の需要が増えていることに対応する。部品の成型に使う金型も同じ工場内で生産することで、コスト競争力も高める。
ワイヤハーネス用の部品を増産する三谷産業子会社のベトナム・ドンナイ工場(ドンナイ省)
同社グループで唯一、自動車部品生産を手掛けるベトナム子会社の「オレオゥ・ビジネス・コンポーネンツ・アンド・デバイシズ」(ABCD)で増産する。生産量は現在の月550万個から700万個まで引き上げる。ベトナム北部のハノイ近郊に位置するハイズン工場では、樹脂を金型に流し込んで部品に仕上げる射出成型機を7台追加し、31台にする。南部のホーチミン近くにあるドンナイ工場でも新たに2台導入し、23台に増やす。
ドンナイ工場では金型の生産ラインも1つ増やし、2ラインとする。樹脂部品の生産に使う金型は通常、外部の専門工場で作ることが多いが、ABCDでは金型を成型機の横で作り、時間をかけずに品種を追加・変更できる体制にしている。今回は金型の生産能力も高めて、受注に柔軟に対応できるようにする。
同社が手掛ける樹脂部品は、自動車の電子機器間を結ぶワイヤハーネスを接続・保護する部品。ワイヤハーネス大手の矢崎総業や住友電気工業といった企業に納入し、両社などが組み電線に仕立てて東南アジアや北米の自動車工場に出荷している。
特に東南アジアでは、家電向けの樹脂部品を主力とする現地企業が自動車部品に参入する動きが広がっている。三谷産業は金型の供給方法を工夫することでコストを抑えつつ増産し、現地企業に対抗する。
同社の自動車用樹脂部品が属する「樹脂・エレクトロニクス関連部門」の売上高は13年3月期に前の期比65%増の約29億円だった。そのうち85%前後をワイヤハーネス用部品が占める。同部門の営業損益は300万円の黒字に転換した(前の期は1億2100万円の赤字)。
日経新聞2013年6月19日により